アールシュミット(R.Schmid & Co)/ワーゲン商会(W.F)明治時代にアールシュミット社が製造していた商館時計を3社ほどの商館が横浜を拠点に別時期に変遷して販売。その変遷の中、最初期に販売していたのがワーゲン商会。初期であるからこその特徴を持つ商館時計が多く見られる。アールシュミット社は、スイスの立派な時計製造会社として広く知られ、商標登録された「馬上の騎士印」が刻印された商館時計が多く現存している。お客様よりご相談がありました。ネットで購入された商館時計だそうである日動かなくなったとのこと、お客様はゼンマイ切れではないかとのことでした。そのやり取りの中で大変印象的だった言葉があります。「折角ウチに来た初めての懐中時計なのでまた時を刻んでもらいたいです。」この言葉をお聞きしてしまうと、商館時計を愛する者としては、どんな状況下でも何とかしたくなってしまいますね。もちろんお受けさせて頂きました。修理価格はサイト上に記載しておりますので、その基本料金にゼンマイ交換ならその費用、そしてその他に不具合がある場合はその修理が+αとなる旨をお話しまして了承を頂きました。▶︎「JPS仕上げ お客様依頼の小型のコロン商会 舞鶴印 高級仕様 商館時計」比較してご覧頂くとわかると多いますが、ご覧の通り商館時計ならではの経年劣化状態。銀無垢ケースは酸化により黒くなっており、この時計の側面は金張りになっている変わり種のケースなのですが、残念ながら金張り部分がわからない状態でした。文字盤には傷はなく綺麗な状態でしたが、汚れがあり、針も参加して黒ずんでおり、環も円形の上部が歪んでいました。お客様の仰られますようにゼンマイ切れと思われ、それ以上の問題箇所に関しましてはゼンマイ修理を行ってからのチェックとなりました。お客様にはご承諾を頂きまして、記事にさせて頂いております。JPS仕上げムーブメント修理(不具合箇所の修理)オーバーホールケース研磨洗浄鏡面JPS仕上げムーブメント洗浄鏡面仕上げ輪列洗浄鏡面仕上げ文字盤洗浄仕上げ時針分針秒針洗浄光沢仕上げetc.など諸々の作業を行いました。初めての懐中時計に商館時計を選んでくださったということもあり、大変嬉しい気持ちで作業をさせて頂きました。作業を進めておりますと、穴石のヒビや割れが3箇所ほど見受けられましたので、交換しなくてはならない状態でした。そして諸々以前に手を入れられた方の不備が見つかりその箇所の修理も行いました。ネットで購入されたとのことで、お客様には責任はなく、あくまでも販売された方の責任ではあるのですが、気の毒に感じます。私も経験があるのですが、笑い話のような話があります。ネットで、あるメーカーの出テンプのハンターケースを購入した際の話なのですが、ウキウキしながら届いた時計を手に取って確認しました。テンプの動きが「んっ…」という状況で…テンプ受けを外したところ、見えているはずのアンクルが見えない…嫌な予感がしました。ケースからムーヴメントを取り出してみると…なんと輪列のほとんどがない状態…、要するに歯車がほとんどない状態でした。色々と購入してきましたが、このようなことは初めてで、流石にどうすることもできずお蔵入りとなったことがあります。ネットは便利なのですが、届くまでどのようなものが来るかわからないという点があります。動くと言いましても程度は人それぞれで主観があります。このことを悪用する方もいらっしゃるのも現実。商館時計の修理は寂しい話ですが、時計店で断られることも多く、ネットで購入するにはある意味大変勇気がいると思います。明治時代の100年以上前の時計ですので、届いた時計が動かない、動いていても動かなくなるということが多い時計です。お話を頂いたら事情をお聞きして何とか治させて頂かなければと思ってしまいます。今回も同様で一生懸命に作業をさせて頂き、そして外装のJPS仕上げもさせて頂き新品のように甦らせることができました。写真をご覧になって頂ければお分かり頂けるかと思います。この時計の最大の特徴は、変わり種のケースです。意匠が施されたガラス風防と裏蓋のベゼル部分、本当に美しい意匠が施されてあります。エングレービングが施されたケースはそこそこあるのですが、このような形状のものは意外とないので大変貴重なケースですね。そして、そのケースの特徴を引き立てるかの如く、ケース側面が金張りになっております。華美でなく大変上品なアクセントとなっております。針がブレゲ針であることからも初期のもので、当時は大変高価な時計であったことが想像できます。今の時計にはない明治時代の商館時計ならではの美しさと魅力を最大限に持った時計ではないでしょうか。本当に美しい時計だと思いました。ケースの酸化を落とした後に、研磨を行うのですが、研磨をしていくことで、金張りが甦ってきまして、洗浄を行った際にはピカピカに光り輝き当時の美しさが顔をだします。この瞬間がたまりませんね。いつも作業をしていて嬉しくなる瞬間です。琺瑯文字盤を洗浄し、ブレゲ針の時針分針、そして秒針を洗浄し綺麗にします。ガラスも曇りを除去するために研磨を施します。一気に夜が明けたように感じるほどの美しさとなります。私も昔に経験があるのですが、時計修理を依頼すると、修理箇所だけの修理で、戻ってきた時計はそのままで、「ここのゴミを取って欲しかった」とか「ここを綺麗にして欲しかった」という思いをしたことがありました。ちょっとしたことなのですが、お客様が感動して頂けるような修理をしたいといつも心がけております。今回もお客様が手に取られて感動して頂けるようにしたいと思い、そのことを考えながら作業をしておりました。この素晴らしい時計は約140年前の時計なのでが、これから100年まだまだ使って頂ける時計です。これだけ長く使い続けていけるのも商館時計ならではです。今の価格が高騰している腕時計では恐らく使い続けることはできないでしょう。商館時計という時計は、本当に持つ人のことを真剣に考え、一生使い続けられる時計作りがなされていた時計なんです。時計会社にとって自分で自分の首を絞めているような時計だったんです。今では考えられないような話ですよね。▶︎「愛用している特別な仕上げを施したコロン商会 商館時計」最後に、お客様のご感想をご紹介させていただきます。開封して中を確認させていただきましたがピカピカになっており驚いています。これほど綺麗になるものだとは思ってもいませんでした。また、時計の音も上品になった様に感じますし元気に動いています。(素手で触るのが憚られるため、白手袋をはめて眺めています)修理を諦めて引き出しの中で眠らせなくてよかったです。歴史からお借りしている時計です、大切に維持していこうと思っていますし令和の今の時間を共に刻んでいこうと思っています。また何か不具合が発生した際はJPS様にお願いしようと思っています。その際はよろしくお願いします。この度は、本当にありがとうございました。このようなお言葉を頂戴しますと本当に嬉しいです。お客様に喜んで頂けるというのは本当にこの仕事ならではの醍醐味です。時計修理の仕事は本当に孤独で苦悩することも多く、大変地味な仕事なんですが、疲れや苦労が一気に吹っ飛びますね。この商館時計もお客様の元へ行けて本当に良かったと思います。明治時代に新品で購入したお金持ちの方が大切にされていたからこそ、このコンディションで今に残ってきたのだと思いますので、その方も喜んでくださっているのではないかと思います。この商館時計は、日本の戦争や天災の中で残ってきた大変な幸運の持ち主だと思うんです。その幸運をお客様が引き継いでこれからも歩んでいってくださると思います。本当に嬉しい限りです。携わらせて頂き感謝申し上げます。時計店で断られてしまった時計でも諦めずにお気軽にご相談ください。掛け時計、置き時計、懐中時計、腕時計、どんな時計でも大歓迎です。▶︎商館時計に漂う明治時代の魅力商館時計などの100年以上経過した時計を本来の姿に甦らせてみませんか。誠心誠意ご対応させていただきます。