コロン商会(J.Colomb&Co)1875年に横浜居留地十番を拠点にフランス人のコロン兄弟が創業したスイス商館。コロン商館の登録商標として舞鶴印や獅子印などで有名。バカラを日本に初めて持ち込んだことで有名な大阪の時計商 安田源三郎がコロン商会を扱ったことでも知られている。今回はお客様より掲載依頼をいただきました商館時計を紹介します。この商館時計はコロン商会のものとなります。横幅50.4mmと商館時計としては少し小型の大変持ちやすいもので、高級仕様の特徴を有しており高級時計として販売されたものと思われます。商館時計は、鍵巻きに始まり、リューズ巻きと変遷していくのですが、針も同様にブレゲ針からこのような石付き装飾針に変遷していきます。この時計は、リューズ巻きとなって少しこなれてからの時代のものと考えられます。▶︎「愛用している特別な仕上げを施したコロン商会 商館時計」ご覧の通り、かなり汚れも酸化もある状態で、明治時代の商館時計ならではといった雰囲気をしております。この時計はコハゼ部分が欠損しており、ビス折れもあり諸々問題を抱えており、分解掃除の際に壊してしまったのか、部品どりとして使われてしまったのか、この状態を見ているとこの時計に何があったのかと色々と感じさせられます。JPS仕上げムーブメント修理オーバーホールコハゼ及び受け別作ケース研磨仕上げムーブメント鏡面仕上げ文字盤洗浄仕上げ時針分針秒針研磨仕上げetc.と諸々の作業を行いました。お客様より部品の欠損しているコロン商会の商館時計をJPS仕上げでお願いしたいという依頼を受け、お受けさせていただきました。このサイトをご覧いただき、商館時計の魅力を感じてくださったそうで大変嬉しく思っております。お客様のご期待に応えるべく、商館時計が本来持っている魅力を最大限に引き出せるよう心を込めて取り掛からせていただきました。この商館時計は、よく目にされる商館時計の形状とは違い、裏蓋が平らではなく、丸くラウンド型になっております。そして、持ち出しと言いまして裏蓋上部リューズ首部分に9金で持ち出されてあります。この仕様は高級仕様によく見られる仕様です。高級仕様ならではの17石という商館時計としては多石で、温度変化に強いパラジウムのヒゲゼンマイが採用されているなどムーブメントの特徴が誇らしげに美しく彫り込まれてあります。ムーブメントは『CH.HORMANN & Co』のものでコロン商会の商館時計ではよく目にするムーブメントメーカーとして知られています。大変綺麗なダマスキン加工がムーブメント受け表面に施され、角穴車丸穴車にサンバースト加工、そしてビス留めとなっており、受けの角に磨きをかけるアングラージュ加工、地板輪列部のペルラージュ加工などが施された高級仕様となります。商館時計のムーブメントは、普及版と高級版では素材の違いは去ることながら見た目にも違いがあります。写真ではうまく鏡面を写せないので残念ですが、現物は大変綺麗な輝きを放っております。2番3番4番の商館時計ならではの歯車も大変美しく光っております。ガンギ車も手の込んだ作りをしており、バランサーのあるアンクルもまたルビーがかまぼこ型に加工されてあったりと大変手の込んだ作りをしております。アンクルの受けは、ガンギ車受けの受石カバー同様に鏡面仕上げの受けとなっており珍しい作りのものでした。全体的に仕上げてありますので鏡面の輝きと同様に金無垢のシャトンも美しく光り輝いております。商館時計は、800銀のものが多いのですが、この時計は900銀が使用されてあります。当然800銀にするとコストを抑えることができるので、価格を下げ売りやすくするため800銀が多いのですが、この時計は高級仕様としていることから900銀が採用されているのも頷けます。当然のことながら最高級の『舞鶴印』が刻印されてあります。舞鶴印の下のナンバーとムーブメントナンバー、そして琺瑯文字盤に記載のナンバーは同番で刻印されており、これも商館時計ならではといえます。3つ石装飾針も高級仕様によく見受けられます。ひどい酸化と汚れがあったので、丁寧に研磨を行い洗浄を行なっておりますので、本来の美しい輝きを取り戻しております。写真ではくすんだように見えているのが残念です。琺瑯文字盤はダブルサンクとなっており、中心部分とスモールセコンド部分が、別々のパーツとなっており、個々に取り付けられてあり大変手の込んだ仕様です。今では焼き物の琺瑯文字盤は大変高級な仕様となり、一部の超一流メーカーでしか採用されておりません。復刻ブームで最近では琺瑯文字盤も復刻されていますが、やはりこの時代の琺瑯文字盤のようなスキッとした仕上がりには程遠いように感じます。商館時計を数々見てくるとその差は歴然として見えてしまいます。手作業で丁寧に時間と手間暇をかけていた時代のものづくりにはやはり敵わないと感じざるを得ません。横から見るとガラス風防ベゼルのリップ部分の9金と表ベゼル・裏蓋共にリューズ首部分をサンドイッチしている持ち出しの9金がよくわかると思います。商館時計は、高級になればなるほど蝶番部分やリップ、持ち出し部などに9金が使用されてあるので、銀無垢とはいえ9金が映え大変美しく、上品に見えます。魚子模様も商館時計の特徴といえますね。先日放映された『黄金の刻〜服部金太郎物語〜』では、精工舎が魚子模様を生み出したようにもとれる内容となっておりましたが、実際には横浜居留地の外国商館が販売した商館時計に採用されていた魚子模様を取り入れたというのが事実で、魚子模様が日本人を魅了したというのも少し違います。商館時計も初期の頃は鏡面仕様で魚子模様は施されていませんでした。あるスイス人時計師が幕末に来日し、日本人の好みを丁寧に調査し、湿気の多い日本では指紋が目立つことから指紋を目立たなくできる魚子模様が採用され、それが定着したというのが本当のところです。こうして新旧並べてみると、昔のままで酸化した商館時計も趣きがあるのですが、やはり本来の姿に甦らせた方が美しく良いですね。商館時計は本当に上品な時計です。日本において初めて携帯する時計として日本仕様で輸入された商館時計のこの姿は、精工舎のタイムキーパーにも踏襲され50年近く続きました。そして、外国商館はスイス・アメリカ・ドイツなどと様々でありましたが、販売された各国商館の商館時計の姿は全て同じで、しかもスイス製。スイス製の同じ姿の商館時計が50年近く販売され続けていたというのは本当に驚くばかりで、日本の時計史上、商館時計以外に類はありません。それは考えに考え抜かれた最終形態ともいうべき姿形であった証であり、人々に愛され続けた時計であったといえます。同じ商館時計を観ていると、ふとこんな顔をしていたのかと思うことがあります。この感覚は今の時計にはないように感じます。手作業で作られてきた時計であるからこその温もりなのかもしれません。建築もそうですが、創建当時のものが今も残る法隆寺を観ていても同じように感じます。創建時の法隆寺は、ノコギリもカンナもない時代。ではどうしていたかというと、木にクサビを打ち込み木を割り、割った木を槍がんなという刃物で表面を削って均一にしていました。そうした木は、木目に沿って割れているために大きな狂いが出ない木となります。そして全てが手作業で組み上げられていました。全てが工業的ではなく、手作業で作られた部品によって作り込まれていることで、人間味のある温もりのある建築物になっているわけです。法隆寺を見る機会があれば是非ともご覧いただきたいのが連子格子です。回廊にある大きな連子窓、縦にさんが複数入ったお寺によくある窓のことです。このさんですが場所によっては、1本、1本、微妙に形の違うものがある連子格子があります。また場所によっては全て均一に統一された形の連子格子もあります。微妙に形の違う連子格子が創建当時のもの、均一の形の連子格子がカンナが誕生してからのものです。見比べていただくと一目瞭然です。確かに均一なものは美しく、仕上がりも綺麗です。しかしあまりにも均一過ぎていて逆に何も感じません。しかし、昔のものにはどことなく温もりがあります。不思議なものです。商館時計にも同様のことが言えるのではないかと思います。それこそが商館時計と今の時計との大きな違いかもしれません。温もりを感じるのも、ふと違うように感じるもの、全ては手作業のなせる技なのかもしれません。そんなデザイン的にも考え抜かれた商館時計の魅力を感じていただけますと幸いです。▶︎商館時計に漂う明治時代の魅力最後に、許可をいただきましたのでお客様のご感想をご紹介させていただきます。『 無事に受け取りましたオーバーホールに出す前と後でここまで見違えるのかと驚きました酸化して黒ずんでいた時は「経年劣化なら仕方がないかな」って思っていましたが、オーバーホール後の感想は「経年劣化がここまで綺麗になるのならオーバーホールに出して大正解」っという感じです写真で見るのと実際に見るとでは全然違いますねびっくりする人の方が多いと思います隅々まで手抜きなく綺麗ですムーブメントも見違えりましたくすんでいたムーブメントでしたが、光が反射して美しくなりましたコハゼは別作してもらいましたが、本物と遜色ないレベルのもので、技術の高さを感じられました動いてるムーブメントを見ていて、動かなかった時計が今動いてるという事に本当に感動しました大切に使って次世代にこの時計を引き継げたら良いなぁと思います 』商館時計を本来の姿に甦らせてみませんか。悩まずお気軽にご相談ください。誠心誠意ご対応させていただきます。