100年以上前の古い商館時計は使えるのか…商館時計は、明治時代に外国商館が販売した懐中時計で、携帯する時計としては日本に初めてやってきた懐中時計でもあります。商館時計の多くは明治時代中期から後期に販売されていたものですので、銀無垢ケースは酸化して黒くなり、ムーブメントもくすみ、歯車も緑色に変色、埃も混入し油も固着して動かないという状態のものがほとんどです。100年以上という時を経た商館時計にはよくある光景と言えます。当然のことながら明治時代当時は大変美しい時計であったはずです。明治時代初期ではほとんどの日本人は懐中時計を知るすべもなく見たこともなかったと思います。ある日、時計商から何やらキラキラしたものを見せられ、さらに裏蓋を開け機械を見せられた時には、美しさもさることながら、なぜ動いているのかとさぞかし驚いたことでしょう。その頃に思いを馳せていると当初の姿が見たくなってきませんか。そんな商館時計ではありますが、実にわかりやすいムーブメントが搭載されています。機械式時計の基本的なムーブメントですので、当時の日本人もこのムーブメントで時計を学んだことと思います。商館時計を明治時代の姿に甦らせる実は、商館時計は当初の姿に甦らせるにはもってこいの時計でもあります。その理由は、文字盤が「琺瑯文字盤」であること。琺瑯文字盤は割れたりヒビが入っているものもありますが、基本的には綺麗に洗って汚れを落とせば元の白い文字盤に戻ります。メタル文字盤ではないので、インデックスも剥がれることはありません。ケースが「銀無垢」であること。真っ黒に酸化してしまっているので普通に手で研いでも落ちないほどに頑固な状態が多いですが、この酸化をある程度落とし、何工程もの磨きをかけてやれば新品同然に光り輝きます。この2つが外観を物語っているので、この2つが綺麗になれば見違えるほど美しくなります。竜頭やダボ、装飾針もムーブメントも汚れていますが、全ては酸化によるものが強いです。その酸化をいかに落とし元の状態に戻せるかにかかっています。ムーブメントの洗浄を幾度も行い最大限に元の状態に戻します。商館時計のムーブメントにはメッキが施されたものがありますが、そうでないものもあります。メッキではあまり鏡面にできませんが、そうでなければ大変手間のかかる工程はあるものの鏡面仕上げを施せます。不思議なもので、鏡面になりすぎると写り込みで光っていないようにも見えてきます。今一度、明治時代の商館時計のムーブメントご覧いただけますか。時計がお好きな方々にはわかっていただけると思いますが、現在の高級時計に採用されている技術が見て取れると思います。その例を列記するなら、「ペルラージュ加工」「コート・ド・ジュネーブ加工」「アングラージュ加工」「ダマスキン加工」「金無垢のシャトン」「大型のルビー」わかりやす所ではこれだけの技術が施されています。今の時計では、超高級時計というものでしか見ることができない技術ばかりです。しかし、明治時代ではごくごく普通に施されていました。人によれば商館時計は陳腐な時計というイメージしかないと思いますが、実はそうではありません。琺瑯文字盤であっても今では高級仕様とも言えます。そして、当時の独特の装飾された時針分針や秒針も素晴らしく、先端は針のように鋭く、繊細に丸い棒のように加工されてあります。今の時計の針はこのような加工はされてありません。手間暇をかけていた時代ならではのことですね。実は商館時計という時計は、超高級仕様の時計なんですよ。今でも品のある洗練された明治時代のデザイン今の時計と明治時代の商館時計とに決定的な違いがあることに気付きますか。それは「ブランド名・ロゴ」が文字盤にないことです。ケース裏蓋には商館のロゴや名が刻印されてありますが、ほとんどの文字盤にはありません。むしろ個体を示すシリアル番号が記載されてあったりします。余談ですが、その番号はケースにもムーブメントにも刻印されてあります。今の時計のようにブランド名が大きく記載されていないということも商館時計の特徴です。明治時代の商館時計は社名を誇示するようなことはしなかったようです。会社としてはブランド戦略が重要と言えます。今の価値観とは全く違った価値観を明治時代の商館の方々は持っていたのかもしれません。確かに江戸時代の人々の暮らしや商人のことを知ると、現代人とでは大きく違って江戸時代の人々は心豊かに感じます。まるで時計のビート数が物語っているかのようです。今では考えることができない明治時代の暮らしが商館時計から色々と感じ取れるのではないでしょうか。その奥ゆかしさを商館時計から感じていただけると嬉しく思います。